賃貸借契約後にキャンセルをした場合、支払った初期費用は戻る?

入居前 契約解除

お引越しをする時、新しい賃貸物件に入居するまでの流れは、大まかに以下の通りです。

  1. 申込
  2. 審査
  3. 初期費用の入金
  4. 契約
  5. 鍵の引き渡し
  6. 入居

もし契約をしてから入居するまでのタイミングでキャンセルをしてしまった場合、果たして支払った初期費用は手もとに戻ってくるのでしょうか?

入居日直前の賃貸借契約の解除

「一寸先は闇」という言葉があるように、世の中はほんの少し先のことでも、全く予想だにしない事象がしばしば起こり得ます。

ことお引越しについても同様のことが言え、新居が決まって契約もすでに済んでいるのにも関わらず、突然別の土地に転勤が決まったり、家庭の事情で実家に戻らなくてはならなくなったり……。

基本的に、賃貸では契約後に申込をキャンセルすることはできず、どうしても住めない場合は結んだ契約を解除することになります。

みなさんもなんとなくイメージがつくかとは思いますが、契約前に「申込をキャンセルする」のと、一度交わした「契約を解除する」のでは、その意味合いは大きく異なります。

ひとたび契約をしてしまえば、これから新しい賃貸物件に入居することやそれに関する定められた内容について、記名押印を通じて了承したことになります。当然、契約を解除する際に発生する条件についても賃貸借契約書に記載されているので、解除時にはそちらに従わなければいけません。

また、諸々の進行をしていた不動産仲介業者は、「賃貸借契約を成立」させたことで報酬(仲介手数料)を正当に受け取る権利を有します。

賃貸借契約は、初期費用を支払った後に行うのがセオリー。敷金・礼金・仲介手数料といった初期費用をすでに支払い、その上で一度取り交わした契約を解除するというのであれば、上記の説明からも、支払った金額のすべてが返還されるわけではないということがわかるかと思います。

賃貸借契約後の入居前契約解除で戻らないお金とは?

結論から言いますと、賃貸借契約を結び、その上で入居前に契約を解除したとなると、少なくともすでに支払っている以下の初期費用については返還義務が生じません。

  • 礼金
  • 前家賃
  • 仲介手数料

まず礼金について。礼金は社会通念上返還が予定されていない金員であるとされているため、返還義務は生じません。

賃貸借契約締結への謝礼とみる見解(東京地判平成17・7・25)と賃料の前払いとみる見解(京都地判平成20・9・30)、はたまた賃借権設定の対価とみる見解など、礼金に対しては多くの見解がありますが、いずれにしても実際の裁判で礼金の返還義務が認められた場合はほとんどありません。

要は、判例でも礼金の返還義務は認められにくいことが実証されているわけです。

次に前家賃。初期費用には、基本的に入居開始月に加えて翌月分の家賃も含まれます。意外と「入居前に契約を解除したのだから、支払った前家賃は返還されるだろう」と考える人は多いのではないでしょうか。

しかし、賃貸借契約書に解約通知の特約が記載されているのであれば、この前家賃に返還義務が生じなくなるケースがほとんどです。契約書に記載される解約通知の特約は、基本的に事前通知とされており、大半はその期間が1ヶ月前通知になっています。この特約がついていると、貸主は解約通知があった日から1ヶ月分の家賃については受け取る権利を有します。

つまり、以下のような流れで、前家賃に返還義務が生じなくなるわけです。

①入居前に契約を解除する
②おのずと解約する1ヶ月前までに解約通知をしていないことになる
③貸主は1ヶ月分の家賃を受け取る権利を得る
④支払っていた前家賃は、1ヶ月分の家賃として相殺される

簡単に言うと、解約通知の特約は一般的に「解約する1ヶ月前には通知してくれないと、家賃の1ヶ月分の金額を請求させて頂きます。」といった内容になっているため、契約してから入居するまでに契約解除してしまうと、1ヶ月前までの解約通知ができていないので、家賃1ヶ月分として前家賃がそのままあてがわれる、ということです。

もちろん、契約書によっては「解約通知は2ヶ月前」としているものもあり、その場合はトータルして家賃の2ヶ月分になるように余分にお金を支払わなければならないことも……。

最後に仲介手数料。仲介手数料は、仲介業者に支払う報酬のことです。仲介業者の仕事はあくまでも「賃貸人と入居希望者との間で賃貸借契約を成立させること」です。なので先ほども説明した通り、入居希望者が結果的に入居しなくとも、契約をしっかりと成立させていれば、仲介手数料を返還する義務は生じません。

ただし、契約解除の理由が仲介業者のミスによる場合は別です。例えば、重要事項説明が十分ではなかった、重要事項説明を怠ったなど。

実際に、仲介業者のミスによって入居前に契約を解除した場合で、仲介手数料の返還が認められた判例があります。(東京地判昭和51・10・14)

ただし、入居前の契約解除でも敷金は返還される!

礼金・前家賃・仲介手数料に返還義務が生じない一方で、敷金は入居前の契約解除でも手もとに戻ってきます。

敷金とは、賃貸借契約上の債務を担保する目的で、賃借人から賃貸人に預け入れるお金のこと。入居まで至っていないのであれば、当然返還義務が生じます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です